誰にでも秘め事はある。

大きくても小さくても、それは他人には入って欲しくない自分だけの領域・・・。

だから、そこに土足で踏み込んで何か酷い目にあったとしても・・君は何も言えないんだよ?

 

第十二章 〜追う者と追われる者〜

 

「サ、サクラさんが・・・歯車?」

サクラの腕にある十字架の痣を見てリョウは呟いた。

サクラはにっこりと笑う。

「そゆこと。」

そして彼はリョウに向かって右手をさしだした。

「よろしくね。リョウ君。」

おずおずとその手を取るリョウ。

って言うことは・・・。

「・・・サクラさんは知ってたんですか? 自分が歯車だって事。」

「ん・・・まぁね。」

「でも、何で僕が歯車を探してるって分かったんですか!?」

僕は何も言ってないのに・・・。

彼には不思議な点が多い。

あれだけの人の中から僕を見つけ出し、僕が歯車って分かった上で話を進めていたんだ。

「え〜? そうだなぁ・・・勘?」

笑いながら飄々という彼に対しリョウは疑いの目を向けた。

「・・・。」

「うそうそ。 まぁ、僕が超能力者だからって事にしといてよ。 ね?」

そう言ってサクラは可愛くポーズをとる。

しといてよって・・・。

あえてサクラのポーズにはツッコミは入れないでおく。

いちいちツッコミを入れたら肝心の話のときに体力が残っていないことは明確。

それにまだ、リョウは納得がいかない。

サクラをじっと見つめた。

サクラはにこにこした表情を崩さない。

笑顔と視線の攻防・・・。

暫く沈黙が流れる・・・。

「はぁ〜。まいったなぁ。そうだな・・・僕は知ってたんだよ。

元々、君っていう存在をね。それに自分が歯車って存在だって事も。」

観念したようにサクラは笑顔で言った。

「知ってた・・? 僕を? ・・・どうしてですか!?」

「それは企業秘密。」

「サクラさん!!!」

まだ隠すか。

「だって、分からないんだもん。 どうして?なんて答えが分かってたらとっくに君に教えてるよ。」

「・・・・。」

そう言われてしまえばリョウには何も言えない。

確かにサクラさんは超能力者だからそういう能力があるのかもしれない・・。

それに自分が夢の中でレオナと出会ったように、

サクラさんも夢か何かで同じ歯車である僕の存在を知ったのかもしれない・・。

確かに、リョウがレオナに、「実際に会った事もなかったのになぜ、私をを知っていたのか?」

・・と聞かれたら答え方に困るだろう。

幸い、彼女にそんな事を言われた事はなかったけど。

「分かりました・・・。」

リョウはサクラに言った。

それを聞いてサクラはにっこりと笑う。

「ありがとう、リョウ君。」

ありがとう、リョウ君。

これ以上、何も聞かないでいてくれて・・・・。

 

「後、1人いるんだよね?歯車の人間ってさぁ。」

「はい。サクラさんと同じ様にどこかに十字架の痣を持ってるはずです。

心当たりは、一応あるんですけど・・・。」

可能性のある人物はいる・・・。

レオナだ。 

ZEROの事も知っていたし、彼女が歯車だという可能性は高い。

サクラはリョウに視線を向ける。

「それってさ、レオナちゃん? ほら、前リョウ君が言ってた。」

「はい。サクラさん、首都で彼女が戦ってたの見たんですよね?」

「ん。まぁね。」

以前はとぼけたのだが、今回はちゃんと答えてくれた。

やはり、自分が歯車であることを告げたからであろうか。

「栗色の髪をした、可愛い子だよね? 

風の力を操ってた・・・。力も強い・・よね?彼女。」

「強い・・・はい。確かに、強いと思います・・。」

魔物を一撃で倒したり、ZEROの刺客に対抗できるのだ。

強い、と言っていいだろう。

それを言うならサクラさんも強いけど・・・。

「それで、レオナちゃんが歯車の可能性があるって・・?  どうして?」

「確信は・・・持てません。でも、彼女はZEROについて知ってた。

かなり・・詳しかったと思います。それに、能力者です。」

あの老婆もレオナの事を知ってた。

彼女が歯車である可能性は・・・高い。

「でも・・・彼女、どこにいるの? そこまで言うなら彼女がどこにいるか、分かってるんだよね?」

「・・・・・・。」

「・・・・・・・分からないの?」

サクラの問いにリョウはただ、引きつった笑いを顔にうかべた。

 

ほんとうに・・・申し訳ありません。

 

 

 

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